里山再生の活動が「蝶の森」を造りました
先だって、オオムラサキが飛翔する「蝶の森」について書きましたが、ここには沢山の種類のチョウが生息しています。
先月中旬、2日間にわたって合計4時間ほど滞在したのですが、わたしのようなビギナーでもいくつものチョウたちと出合うことができました。
蝶の森の広さは、約2ha。安曇野を一望できる長峰山(933m)へ通じている遊歩道をはさんで約0.3haがチョウの生息する草原となっています。
草原には、チョウたちが吸蜜するノアザミ、タムラソウ、ハルジオン、カンゾウをはじめ多くの野草が、季節を変えて咲き誇っています。
草原を取り巻くように「チョウの道」が東西に開かれていて、ぐるりと一周しながらチョウの観察ができるようになっています。
チョウは幼虫の時、主に森林で木の葉を食べて育つタイプと草原で草の葉を食べるタイプに分けられるそうです。
蝶の森は、森林と草原が一体となっていることから多くのチョウが共存できるようになっています。
荒れ果てていたこの森の整備にかかわってきたのが、NPO法人の「森倶楽部21」の皆さんで、多様な生き物が生息していた里山を再生する活動を続けて来ています。
高齢化が進む集落に入り、里山が培ってきた昔の山の様子や暮らし方などの話を聞いたり、フィールドワークをしながら活動してきています。
「沢から水を惹き、溜池をつくり、田畑を耕し、草原からは家畜の飼料や田畑に入れる肥料、屋根を葺くための茅(かや)を採ってきました。
また森林からは山菜やきのこ、炊事や暖房に使う薪や炭、建物に使う材などを調達してきました。
そして、必要な資源が毎年得られるように、季節や植物の生長に合わせた山の手入れなど、さまざまな工夫をしてきたのです。
集落では、限りある資源を分け合って暮らすために決まりを作り、暮らしのための大切な技術も代々引き継がれてきました。」(『里山とともに』 森倶楽部21発行)という地元集落の年配者から聞いた里山の昔の暮らしは、どんな森を蘇えさせるかを検討するうえで、たいへん参考になったようです。
森倶楽部21では、高齢化などにより山の手入れがされなくなり、うっそうと繁って込み合った林床に光を当てるため除間伐を行ったり、観光乗馬場の跡地に生い茂っていた牧草を引き抜きたり、手作業による遊歩道の整備などを行って里山の再生を続けて来ました。
最近も森林保全活動に熱心な企業や行政から支援を受け、クヌギとエノキ約300本を植樹しました。
エノキは、オオムラサキの幼虫の餌となりますし、クヌギには樹液を求めて成虫となったオオムラサキはじめ多くのチョウや昆虫が群がります。
エノキは5種類のチョウが食草とするということですが、8年前の2004年には「蝶の森」にエノキは一本しかなかったそうです。
この一本にゴマダラチョウの幼虫がいるのを見つけ、さらにオオムラサキの幼虫も発見してから森林整備も加速されたといいます。
森倶楽部21の調査では、2003年には16種だったのが今では70種を超えるチョウが生息するようになったといいます。
9月になるとサラシナショウマの白い花が咲き、アサギマダラが蜜を求めて姿を現わすといいます。
秋になると南へ移動、沖縄や台湾まで海を越えて1000キロ以上飛んで行くという、あのアサギマダラです。
これからも「蝶の森」を訪れる機会が増えそうです。
チョウをはじめ多くの昆虫、野鳥たちとの出合いを求めるなら、この一帯は格好の地と言えます。
* チョウについては、ビギナーの域を出ません。撮って来た画像と図鑑を照らし合わせて同定しました。違っていましたらご指摘ください。
| 固定リンク
「ハーブガーデンと安曇野の自然」カテゴリの記事
- 海を渡る蝶・アサギマダラを見ました(2012.10.04)
- 安曇野で野性スズムシの美しい音色を楽しめます(2012.08.30)
- 里山再生の活動が「蝶の森」を造りました(2012.08.07)
- いま咲いているガーデンの花々-5(2012.07.20)
- ハーブガーデンの“住人”、キジの親子が姿を見せました(2012.07.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント