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目薬師さま~堀金・田尻

むかし、田尻の薬師堂には、薬師如来さまが祀られていて、願を掛けると目の病が治るということで遠くからも大勢の人がやってきたということです。                                    

ある年、村にただれ目が流行りました。薬師堂の近くに住む伝三もこのただれ目にかかり、薬をつけても少しもよくなりませんでした。女房のおとくが、「おまえさん、こんなに手を尽くしても治らねえで、どうだね、お薬師さまに頼んでみちゃ」といいました。 

     089                       (田尻にある薬師堂)

しかし、伝三は不信心で「おら、お参りすりゃ治るということは、嘘っことに思えてしょうがねえだよ」と、気が乗りません。「おまえさん、これほど困っても、まだお薬師さまを信じねえだかい。信じなんでもいいが、このままだと目が見えなくなるんね。それでもいいだね」。おとくが心配のあまりきつく言うので、伝三は仕方なしにお参りすることに承知しました。

おとくは、伝三の手を引いて薬師堂へ行き、和尚さんに願掛けを頼みました。和尚さんは、じいっと伝三の目を見て「これはひどいことになっておるのう。治るかどうかは、伝三さんの心がけしだいですぞ」といいました。

伝三は須弥壇(しゅみだん)に近づき、床に顔をつけるように座り、和尚さんのお経をきいていました。

     092 (無人で施錠されている薬師堂の中をのぞくと、 須弥壇に厨子があります。この中に薬師さまが安置されているのでしょう)                                    

「三日三晩の願掛けじゃ。薬師さまに朝晩お参りして、しっかり頼みなされよ」と和尚さんにいわれ、「南無阿弥陀仏、なむあみだぶつ……」と念仏を三日三晩続けました。しかし、四日経っても五日経っても目はいっこうによくなりません。

「みろ、あんねに願掛けたって、ちっとも治らねえじゃねえか」と伝三は怒って、おとくに言いました。伝三にそう言われて、おとくも困ってしまいました。                                    

しばらく考えていたおとくは「そうさね、これしかねえわね」とひざをポンと叩き、ひき臼を取り出してきて、米の粉を挽き始めました。その粉をグツグツと煮て、だんごを作りました。

「さあ、おまえさん、おまえさんの目の形のだんごを作ったで、これを目に押し当てておくれ」と真顔でいうので、伝三はおとくの言う通り、だんごをいくつも目に押しつけました。

     067    (おとくが目だんごを作ったひき臼、こね鉢は、こんな道具だったのでしょうか)

おとくは、そのだんごを持って、伝三と一緒に薬師堂へ行きました。「和尚さま、伝三の目をたんと持ってきたで、これをお薬師さまに上げてお願いしりゃ、きっと目の患いは治るんね」

「おお、そうじゃのう。おとくさんは、いいことに気がつかれた。いつも心がけがよいから、如来さまのご加護がいただけるのう。伝三さん、しっかり薬師さまにお願いしなされや」と、二人に答えました。

     095                     (薬師堂の近くに庚申塔が置かれています)                                    

おとくと伝三は、それから三日三晩、薬師堂と家を行き来して、真剣にお願いしました。その甲斐あってか、四日目から目ヤニも取れ、涙もなくなりました。

「おまえさん、よかったいねえ。やっぱりお薬師さまのおかげだんね」「そうだいなあ。おら、こんなに一生懸命になったことはなかったぞ。おとく、おまえのお陰だ」                                    

それから後、この話が伝わり、目の患いには「お目だんご」を供えて、願かけするようになったということです。

 

       * 『あづみ野 堀金の民話』(あづみ野児童文学会編)を参考にしました。                                     

                                    

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