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友だちに化けたキツネ~豊科・新田

豊科の新田に、法蔵寺というお寺があります。むかし、このお寺の周りは、広く大きい松林でした。山門をくぐって広い道を歩いて行くと、両側に見える林は大きな松が傘をさしたように枝をはり、地面には草が茂っていて、昼間でも薄暗くなっていました。

     103_2         (宝蔵寺の山門。今でもこの右手に大きな松林になっています)

このお寺の本堂の下に、一匹のキツネが棲んでいました。年とったキツネですので、人間に化けるのがとても上手でした。

本 堂の北にある、観音さまのお祭りの日のことです。山門から本堂の近くまで店が並び、朝から大勢の人でにぎわっていました。平吉は、お祭りへ行って夜店で 売っているミズアメが食べたくてしかたありません。母親に言うと「そんねに遊んでばかりいねえで、ちっとは仕事しろや」と許してくれません。

仕 方がないので平吉は、夜になるのを待って、家からそっと銭を持ちだし、友だちの新蔵とお祭りへ出かけました。二人は、夜店をのぞいたり、アメを買って食べ たりしてぶらぶら歩いていました。そのうちに平吉は、新蔵とはぐれてしまいました。あっちこっちと探しましたが、大勢の人なので、分かりません。

     Photo_5           (稲が元気に実ったころ、夏祭りが開かれました=新田地区の水田)

「しょうがねえな。残った銭で、ミズアメでもなめて、けえらずよ(帰るとしよう)」。平吉が店でミズアメを買っていると、後ろから肩をたたくものがいます。振り返ると、それは、はぐれた新蔵でした。「どこへ行ってただや。おら、探しただ」。

すると新蔵は「おら、小便したくなったで、ちょっと林の中へ行ってただわ」と、いうのです。そして、「もっと、うめえ店があるで、おらがおごってくれるわ」と、平吉の手を引っ張って歩きだしました。

夜店を通り抜け、山門を出てどんどん歩いて行くので、平吉は、不思議に思って聞きました。「新さやい、どこへ行くだや。店でおごってくれるじゃねえだかや」というと、「今夜はな、隣の成相(なりあい)でも祭りだぞ。そっちへ行ってみるじゃねか」と新蔵は答えました。

どんどん歩いて行くと、そのうち新田堰へ出ました。すると、新蔵は「平吉さやい、おらをおぶって渡ってくんねえか。おごってくれるで、いいじゃねえか」と、いうのです。平吉は、しかたなく新蔵をおぶって堰を渡りました。

           Img_6105_3           (穂高・有明山神社裕明門の極彩色の天井絵に描かれているキツネ)

そのうち背中の新蔵が、平吉の頭の毛をペロペロとなめるのです。「新さやい、何をするだや」と平吉がいうと、「おら、キツネだぞ。おめえは親の言うことも聞かねえ、がった息子(きかん坊)だそうじゃねえか。ひとつ、おらがいじめて(こらしめて)くれるぞ」といいます。

平吉は、キツネを背負っていたことに気づき、急に寒気がして、冷や汗が体中から噴きだし、足がガタガタ震えだしました。それでも背中のキツネは「おらの言うとおりにしろよ。しねえと、えれえめにあわせるぞ」と、強く言います。

平吉はしかたなく、キツネが「あっちへ行け」「今度はこっちだ」と、言われるままに川の中をキツネを背負って歩きまわりました。

          080                                (緩やかに流れ、水田に水を運ぶ新田堰)

平吉は、フラフラになりました。もう我慢ができなくなり、背中のキツネをザブーンと川の中へ放り込みました。そして、一目散に家へ逃げ帰りました。家に帰った平吉は、それから長いこと、病人のように寝込みました。

そして、ようやく元気になった平吉は、「おっかさまの、いうこと聞いていりゃ、あんなこええ(怖い)めに遭わなかったで」と後悔し、それからよく家の手伝いをするようになったということです。

 

      * 『 安曇野の民話 』 (平林治康著)を参考にしました。

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