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峯方の首なし六地蔵~明科・峯方

むかし、上生野に与平という働き者がいました。年はまだ若いのですが、朝がしらじらと明けて来たころには田畑の仕事をはじめ、家に帰るのはいつも月を背中に背負うほど、よく働きました。

与平の田畑は、犀川(さいがわ)の近くで、この川は大雨が降るとすぐあふれた水が田畑を荒らしました。

その年も、大雨の降る梅雨になり、案の定、川は増水し、水は土手を超えて与平の田んぼも水浸しになりました。水がようやく引くと、田んぼの中は石だらけになっていました。

           063(むかし、犀川は大雨が降ると氾濫し田畑は被害を被りましたが、いまは河川改修も進み氾濫することはなくなりました。犀川と稲が実っている明科の田。手前の車道は国道19号)

与平はまた米が作れる田んぼにしようと、石を拾い泥土を耕しました。そして、耕し終わったところに豆を播きました。

秋の終わりころのことです。「与平はいるか」と、なんの前触れもなく松本城から年貢の取り立てに役人が来ました。与平が留守と分かると、隣の家の糸をつむいでいたばばに声をかけました。

           054(今は国宝指定を受け美しい姿を見せる松本城も、その昔、与平たち農民にとっては高い年貢を課す権力の象徴と映ったかもしれません)

ばばは「与平は田んぼで」と答え、田んぼへ行く道を、わざと遠回りする道を教えてやりました。役人が去ると、ばばは一番近道を、ころげるようにして与平のもとへ行きました。

「役人が来たで。米を作らず、豆なんか作りおってと怒っていただ。まもなく、こっちさ来るだ」「違う、ばば。おらあ……」「ばばは、分かってる。大水の後、豆だってよく作ったくれえだ。だで、あの役人には通らねえじ」。

もう与平にとって、逃げるしかありませんでした。山を越えて遠く離れた真田の町へ逃げようと思いました。

     090(与平が役人の手から逃れるために走った峯方の道。今でも道幅は狭く、木々が生い茂り片側は急な崖になっています)

役人は与平が逃げたとみて、馬に鞭を打って追って来ました。六地蔵のある山の中腹まで逃れてきた与平が下の道を見ると、馬に乗った役人の姿が見えました。「もうだめだ」と思った与平は、とっさに傍に立っている地蔵さまに頭を下げ、「どうかお助け下せえ」と手を合せました。

すると、どこからか「わたしの後ろに隠れなさい」と、声が聞こえてきました。辺りを見回しましたが、誰もいません。よく見ると、六番目の地蔵がほほ笑んでいました。与平は「お地蔵さま」といいながら、その地蔵の後ろに隠れました。

ほどなく馬で追ってきた役人が来ました。役人は雨上がりの道に、与平の足跡が六番目の地蔵のところで消えているのを見て「与平、そこに隠れているのは分かっているんだ。出てこい」と怒鳴りました。

地蔵の陰で、震えながら隠れていた与平は「もうだめだ。お地蔵さま、助けて下せえ。お願えします」と、両手を合わせ心の中で一心に頼みました。すると一番目の地蔵が「つ」といいました。地蔵がしゃべったので役人が驚いていると、その地蔵の首がコロリと落ちました。そして、すぐに二番目の地蔵が「よ」といって、首を落としました。三番目は「く」といい、四番目は「い」といい、五番目は「き」、最後の六番目は「よ」といって、これも首を落としました。

           Cimg7634(六地蔵の首が次々と落ちたことにより、与平は助かりました。この六地蔵は、穂高・満願寺のお経橋のたもとにあるものです)

これを見ていた役人は腰を抜かし、驚きのあまり、言葉もでません。やがて、両手をつき、這うようにして馬まで行き、やっとのことで馬にまたがり、転がるように坂を下って行きました。

与平は「お地蔵さま、おらを助けるために首を落とされて…。ほんとに、ありがとうごぜえます」と、なんどもなんどもお礼をいいました。

家に戻った与平は、手桶と線香を持って、首を落とした六地蔵のところへ再びやって来ました。沢から手桶に水を汲んできて、お地蔵さまを一つ一つきれいにし、線香を上げました。

そんなことがあってからも与平は、それまで以上に働き、水害で荒れた田んぼを米の作れる田に作り上げました。そして、朝と夕方は六地蔵の方へ手を合わせることを忘れませんでした。

 

       * 『 明科の伝説 岩穴をほった竜 』(降幡徳雄著)を参考にしました。   

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安曇野むかしばなし」カテゴリの記事

コメント

安曇野の民話大変興味深く読ませて頂いております。
安曇野の民話ゆかりの地を巡るウォーキングなどをしてみたと思っているので、
是非一度お話させていただきたく思っております。
近いうちにハーブスクエアに伺います。

投稿: mari | 2012年5月23日 (水) 06時52分

mariさん、こんにちは。
ブログをご覧いただきましてありがとうございます。

安曇野は、地域に伝わる昔話の実に多いところですね。
いろいろなところが少し分かるようになりました。

もう少し、「むかしばなし」の連載を続けます。

どうぞ、いらしてください。お待ちいたします。

投稿: まき | 2012年5月24日 (木) 11時40分

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