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目赤不動~堀金・田尻

むかし、田尻の不動堂では、毎年一月にお不動さまのお祭りをしていました。白装束(しろしょうぞく)姿の行者が、火のついた縄の上を歩いてわたる「火渡り」が見れることもあり、遠くからも見物人が来て大勢の人たちでにぎわいました。                                    

ある年のお祭りのときのことです。いつものように行者が火渡りをし、その後、口から火を噴く行(ぎょう)を見せると、小雪まじりの風が吹き、寒さにふるえていた見物人から大きな拍手が湧き起こりました。

     021           (不動さまに願掛けし、成就した人たちの謝意をこめた木札が奉納されています)                                 

祭りが終わり見物人が帰った境内は、がらんとして燈明(とうみょう)に灯した火が揺れていました。お堂の燈明の番をする滝造と茂吉の二人が残っていました。風が強くなり、火渡りをした縄の後から、ときどき火の粉が舞い上がっていました。二人は、水をかけ火事にならぬよう火の始末をしたあと、本堂で碁を打ち始めました。                                   

茂吉が、次の手を考えている間、辺りを見渡していた滝造はビクッとしました。お堂の真ん中のお不動さまが、真っ赤な燃えるような目で、滝造をにらんでいたのです。「どうしただ、滝造さん」「お不動さまがせえ、おらのことジイッとにらんでいただ」                                                                           
茂吉が振り向くと、目赤不動の目が真っ赤に燃えているように見えました。この目赤不動は、目の病を治す不動さまとしてお参りに来る人たちも多く、大人の背丈をはるかに超える大きな立派な不動さまで、村人の自慢でした。

          015_2(不動堂のなかは真っ暗で、フラッシュをたいて目赤不動が見えましたが、茂吉が助け出した不動さまはかなりの大きさです)                                 

二人は碁を打ち続けていると、境内の方で「ガターン!」と大きな音がしました。「なんの音だいね。行って見てくるわ」と、先にたって見に行った茂吉が「てえへんだー。燈明が倒れて燃えているぞ」。二人は桶で水を汲んできてかけました。しかし、風が強かったこともあり火の勢いが止まりません。                                    

「火事だー!」「不動堂が燃えているぞー。大変だー」近所の人たちも火に気づき、半鐘(はんしょう)を鳴らし、駆けつけてみんなで火を消しましたが、火の回りは早く、お堂は火に包まれました。滝造は、夢中で火を消しながら「そうだ。あの時、お不動さまが、おらをじいっとにらんで何か言いたそうにしていたのは、これだったんだ」と、お堂の中に飛び込んでいきました。

     016                      (暗がりの中でも、不動さまの目が赤いのが分かるでしょうか)

その後ろ姿を見た茂吉が「あれっ、滝造さん。あぶねえー」と叫びました。やがて煙がもうもうと立ち込めている本堂からズシリ、ズシリと歩いてくるものがありました。「うわあっ。お不動さまが出てこられたぞー」。真っ赤に燃える目で周りをにらみ、堂々としたお不動さまが現れたので、大騒ぎになりました。                                    

それが、滝造が背中に背負っているのだと知った村の人たちは、もっと驚きました。「滝造さんは、よくあの大きな不動さまを助け出すことができたもんだ」。本堂も焼け落ちてしまいましたが、お不動さまは、片腕を焦がしただけで、無事助け出されました。それだけが村の人たちにとっては、災難の後のたった一つのなぐさめでした。

          014                                  (火災で焼失した後に再建された不動堂)             

火事に遭っても、運び出されて助かった運の強い目赤不動を、村の人たちは「運が開ける不動さま」として、以前にも増して大事に祀るようになりました。火事のあと何年もかけてお堂も建て直されました。                                    

                                 

         * 『あづみ野 堀金の民話』(あづみ野児童文学会編)を参考にしました。

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