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伍社のキツネ火~三郷・及木

むかし、及木の伍社(ごしゃ)は、大きな森に囲まれた小さなお宮でした。お参りする人も少ないので、お宮の周りは草が茂り人が通るのもやっとでした。ですから、キツネがお宮の縁の下や、枯れた木のほら穴を巣にして棲み着くようになりました。

願いごとをしようと訪れた人が、キツネに化かされて方向をまちがえたり、お宮にお供え持っていった人が大入道に出会って腰を抜かしたとか、いろいろな噂がたちました。村人たちも、草を刈ったり巣を取り払ったりしましたが、すぐまた棲み着いてしまうのです。 

           155                     (現在の及木の伍社宮。キツネも棲んでいません)

元吉じいさんも、キツネの噂を聞くたびに「いまいましいキツネどもめ、なんとか追い払う方法はないものか」と考えている一人でした。ある日、「そうだ、すがれ(地蜂)とりの火薬の煙でキツネをいぶしてくれるか」と、思いつきました。そして、隣の勘助に相談しました。

「おもしれえぞ。やってみるじゃねえか」ということになり、さっそくたっぷり火薬を作り、お宮へやって来ました。床下をのぞくと、あちこちに穴がいくつもありました。二人は、紙に包んだ火薬に火をつけて、穴へ放り込みました。黄色い煙がもうもうと立ち上がり、キツネたちが穴からよろよろしながら出てきて、うずくまりました。

「棒でどやしゃげて二度と来ぬよう追っ払ってやりましょや」と、勘助がいったので、二人は草をかき分けて棒をさがしに行きました。

           175_2     (近くにお稲荷さまがあり、キツネが神使として祀られています=及木・熊野社内の稲荷社)

しばらく行くと、大きな木の下にきれいな娘がいて、「棒をお探しかね」と聞きます。「ああ、そうだが。おめえさんは見かけねえひとだが、だれだい」と元吉じいさんがいうと、「わたしは、お宮に住むキツネの仲間です。もう、あそこには棲みませんので、どうか今度だけは許しとくれや」といいます。二人は、お宮に棲まないということを約束するならということで、許してやることにしました。

娘の姿をしたキツネは、「許していただいたお礼に、キツネ玉を差し上げるでね。これは、おらたちの大切な宝だじ」といって、ニワトリの卵くらいの黒い玉をくれました。

「見たこともねえ変な玉をもらったが、こりゃなんだや」と、勘助が玉をくるくる回すと、キラキラ光るではありませんか。「あれっ、この玉は光るわい。キツネ火の元かいなあ」といいながら、大事に家に持ち帰りました。

     163                (伍社を裏側から見ると、大きな森の中に社があるのが分かります)

その夜から元吉じいさんも勘助も、訳のわからない病気にかかり、寝込んでしまいました。熱にうなされた元吉じいさんの夢の中に、伍社の神さまが現れ「キツネ火玉を、伍社のキツネに返しなさい」といいました。そのことを妻のタネに話すと「キツネのたたりだわ。あんな玉なんかもらってくるから、こんなことになっただ」と怒り、すぐ玉を持ってお宮に走っていき、投げ返しました。

キラキラと夕陽に輝いたキツネ玉は、草むらに落ちました。そして、両手を合わせて「どうかキツネさん、主人の病気を治しておくれ」と、お願いしました。

しばらくして、元吉じいさんも勘助も回復して元気になりました。二人は、油揚げをたくさん持って伍社のお宮に行き、そっとおいて帰ろうとすると後ろからあの娘の声がしました。

「お二人ともキツネ玉を返してくれてありがとうござんした。また、たんとの油揚げもごちそうさまです。このお礼にお盆の迎え火、送り火には、おらたちが立派なキツネ火を見せるでね」と、にっこり笑っていうとさっと姿が消えました。

     111(いま伍社の入り口の左右に、石積みされた上に、社を守護する狛犬がいます。キツネも怖くて、寄りつけないでしょう)

そして、八月十三日のお盆の夜、元吉じいさんと勘助が伍社の方を見ると点々と光るキツネ火が現れ、ゆらゆらと右に行ったり左に行ったり、一つに集まっては散り、一列に並んだかと思うと分かれ、光の踊りがしばらく続きました。送り火の夜も同じように、キツネ火を楽しむことができたということです。

 

            * 『あづみ野 三郷の民話』(平林治康著)を参考にしました。

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