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ツルの宮~穂高・古厩

市兵衛は有明山のふもとに住む猟師でした。ねらった獲物はむだなく仕留める腕を持ち、しかも、それを毛皮にしたり、剥製(はくせい)にすることがとても上手でした。

ある年の雪どけも間近のある日、市兵衛は、その冬最後の猟に出かけました。 ところがその日は、一日中かけずり回ったのに、ウサギ一匹獲れませんでした。市兵衛は仕方なく、仕掛けていたわなをかたづけ、薄暗くなった道を帰ろうとしました。

     031(市兵衛も猟を終えて帰ってから、こうして晩酌で一日の疲れを取っていたのでしょう=大町山岳博物館蔵)

ふと見上げると、大きな鳥が二羽、空高く飛んでいるのを見つけました。「よーし、あの鳥が、この冬の猟のしおさめだ」と、かついでいた鉄砲をかまえ、ねらいを定めて引き金をひきました。ズドーンという大きな音とともに、飛んでいた鳥の一羽が落ちるのが見えました。

「しめた! やったぞ」。急いで近づいてみると、なんと、うつくしいツルが倒れているではありませんか。「こりゃ、りっぱなツルだなあ」とツルを抱き上げ「そうだ。六助のところは雪が解けりゃ嫁取りだといっていた。お祝いにこのツルを贈ろう、きつと喜ぶぞ」と思いました。市兵衛と六助は、小さいときからの仲よしでした。

     107(ツルは有明の空を飛んでいたのでしょうか? ハクチョウや写真のシラサギが飛んでいるのは、確認されているのですが…=大町山岳博物館蔵)

市兵衛は家に帰ると、さっそくそのツルを剥製にしました。それを六助の婚礼の日に贈って、とても喜ばれました。その後、六助はそれを床の間に飾り、家宝のように大事にしました。 二年たち、三年たって、六助のところでは次々に子宝に恵まれ、農作物の収穫も、ずっと多くなりました。

六助は、こんな幸せはみんな市兵衛からもらったツルのおかげではないか、と村の衆に話しましたので、村の衆は「あのツルはえびす様か、大黒様の生まれかわりかもしれね」などと、噂しあいました。

     040_3           (恵比寿さまか大黒さまの生まれ変わり?=明科・下押野の石像)

いっぽう市兵衛は、このごろすっかりふさぎ込んでいました。というのは、毎年雪が消え始めるころになると、一羽のツルがどこからかやって来て、悲しそうに鳴きながら、市兵衛の家の上を飛び回ると、さっと北を指して飛んで行くのでした。

その鳴き声を聞くと、市兵衛の胸はなぜかしめつけられるように痛むのでした。そして、今年も市兵衛は、そのツルを見たのでした。 「あのツルの鳴き声は、ただごとではないな。あの時、おれが撃ち落したツルは、あのツルとつがいのツルだったのか。きっと北へ帰る途中だったのだろう」。

亡くした相手を探して、毎年やってくるツルの気持ちを思うといても立ってもいられなくなり、六助のところへ出かけ、わけを話してツルの剥製を返してくれ るように頼みました。「そうか。残念だが、そういうことなら仕方がないなあ」と六助は気持ちよく返してくれました。

市兵衛は、さっそく家の側へ小さな祠(ほこら)を建てて、剥製のツルを手厚く供養し、猟をきっぱりやめることを誓ったのでした。その夜、市兵衛は自分の家の上空を二羽のツルが二度、三度、大きく回ってから北をさして飛んでいくのをはっきり見ました。「あっ、あのときのつがいのツルだ!」。市兵衛は思わず叫んで、二羽をいつまでも見送りました。

     034  (猟をやめることにした市兵衛は、こうして銃を折ったのでしょうか=大町山岳博物館蔵)

それからというもの、市兵衛は悲しい声で鳴きながら飛ぶツルの姿を見かけることはなくなりました。 村の人たちは、市兵衛の建てた祠を「ツルの宮」と呼び、毎年、ツルの飛んでくるころ、お祭りをしたということです。

 

       * 『 あづみ野 穂高の民話 』(安曇野児童文学会編 )を参考にしました。

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