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湯のくぼ~三郷・南小倉

室山への登り口、西側の山麓に水をいっぱいたたえた室山池があります。

池の側でじっと耳をすますと 「ボコ、ボコ、ボコ」とかすかな音が聞こえ、池の底から時どき白い泡が出ては、水面で「パチッ、パチッ」と消えてしまいます。

お年寄りにいわせると、これはずーっと昔、温泉が湧きでていたことを示す名残りで、温泉として人が行き来していたころ、この一帯を「湯のくぼ」と呼ばれていたのですが、湯の神さまの怒りに触れてその温泉は途絶えてしまったのだといいます。

          028       (かつて温泉が湧き出て、にぎわったという湯のくぼ。今は池になっています)

湯のくぼの温泉は、「白池の湯」といい、皮膚病に効くといわれ遠くからも大勢の人が訪れていました。檜皮葺き(ひかわぶき)の屋根に石をのせた湯屋の中は、ヒノキ造りの大きな湯舟と洗い場がありました。湯屋の外には流れ湯を利用して馬や牛を洗えるように、広く湯が張られていました。

ある日、若い牛方が牛を洗いに来ました。「おう、ちょうど誰もいねえで。ここで洗ってやれ」と、牛を洗い場に引っ張り込みました。洗い始めて少ししたころ、五兵衛がやって来ました。

     175             (若い牛方は、自分の牛をかわいがっていたのでしょうが…)

「兄やい、そりゃあんまりだぞ、湯の神さまのたたりにあうで、やめとけや」と止めました。しかし、牛方は「そんなこたあるもんかい。へへーん」といって聞き入れず、湯舟の湯を手桶でかけるのをやめません。

牛方がそうして牛を洗ってしばらくすると、突然牛が変な声をだして倒れこみました。「やい、どうしただや、シィッ、ソレッ」と、牛方は驚いて必死になって起ちあがらせようとしますが、牛はビクともしません。五兵衛も手を貸して牛の背中を押してみましたが、牛は動きません。

その時です。ドドーンと大地をゆるがすような大音響と、目もくらむような大きな光が流れました。牛方も五兵衛も、その場で気を失ってしまいました。

どのくらい経ったか、五兵衛は耳元でしきりに自分の名を呼ぶ声で目をさましました。隣の家の吾作の顔が目の前にありました。

     024                          (池にはハスの花が咲き、訪れた人を和ませてくれます) 

五兵衛は起き上って辺りを見回し、びっくりしてしまいました。白池の湯の建物はバラバラに壊れて、向こうに飛ばされ煙をあげて燃えています。湯舟も洗い場もなくなっていて、どこがどこなのか面影もありません。向こうに牛と牛方が横たわっていました。      

「おお、あの若い牛方が、おらの止めるのも聞かなんで、牛を洗い場に引っ張り込んだ結果がこれか。なんてこっただ」と五兵衛がいうと、「牛と牛方が倒れているのは、冷てえ水のなかだんね」と、吾作が答えました。
「なに、それじゃ、湯まで止まっちまっただかや。こりーゃ、やっぱり湯の神さまのたたりだいなあ」

                021_2(湯のくぼの温泉は途絶えてしまいましたが、新たに室山の山頂に温泉宿泊施設「ファインビュー室山」ができました)

こうして、あれだけ栄えていた湯のくぼの湯は、湯の神さまの怒りに触れて消えてしまったという話です。

 

             * 『あづみ野 三郷の民話』(平林治康著)を参考にしました。

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