« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

安曇野の屋根瓦-10  鯱(その1)

安曇野の飾り瓦で一番多く目にするのは、やはり鯱(しゃち)です。

     11                 (穂高・新屋の民家)

鯱といえば、まず頭に浮かぶのは名古屋城や大阪城の天守閣にそびえる鯱鉾(しゃちほこ)でしょうか。

どちらも鯱瓦に漆(うるし)を塗り、金箔を貼り付けてありますので、金色に輝いていますが、こちらは瓦そのもので、いぶし銀の落ち着いた色彩です。

     121                 (明科・北村の宗林寺)

建物が火災に遭ったとき、海水を一気に飲み干して、火に向けて噴きだして火を鎮めるという想像上の動物で、火除け守り神として大棟の両端に取り付けられます。

     050                  (堀金の民家)

ご覧になってお分かりのように、姿は魚で頭は虎、尾ひれは常に空を向いています。背中には、幾重もの鋭い刺を持っています。

     7_2                 (明科・宮本の犀宮社)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

小芹の目薬師さま~明科・小芹

むかし、小芹の薬師堂に、新しく庵主さまが、はるばる芸州(広島県)からやって来ました。この庵主さまはお薬師さまを熱心に信心する方でした。

毎日、お堂の近くにある池で身を清めてからお経を上げ、そのあと近在の村々へ出かけ、御仏の道を聞いてもらおうと訪ね歩きました。 

          019                 (小芹の山深くに無人の薬師堂がひっそりと佇んでいます)    

でも、村の人たちは「庵主さまは遠くから来たっていうじゃねえかい。おら、よく分からねえだい」「よそものの言葉は、信用できねえ」などと言って、耳を傾けようとはしませんでした。

それでも庵主さまはなんとかして御仏の話を聞いてもらおうと家々を回りました。そうしているうちに庵主さまは、村の人たちの中に目の病気にかかっている人たちの多いことに気づきました。

     021(薬師堂から里までは、つづら折りの急な山道を往来しなければなりません。庵主さまは、毎日この道を行き来していたということなのでしょう)   

「おお、ほうよ(そうだ)、この目の病を一人でも治せましたら、きっと御仏の話も聞いてもらえるかいの」。やっと村の人に近づく術を見つけた思いです。そして、さっそく目を患っている人の家へ出かけました。

「仏さまにおすがりして、目の病を治してみよっては(みては)?きつとようなりますけえ(よくなりますよ)」とすすめましたが、「おらのこの目は、ずうっと前から医者に診てもらったり、お祈りもしてもらったが、ちっとも治らだんね。拝んで治るというもんじゃねえずら」と相手にしてくれません。どこの家に行っても同じように断られました。

           011   (お堂の近くに道祖神2体が風雪から守られるように安置されています)   

がっくり力を落とした庵主さまは、重い足取りでお堂へ帰らざるをえませんでした。途中、道端に座り込んでぼんやりと遠くの空を見ていました。そのとき、「くたびれた。ひと休みしずよ」という声がしました。

振り向くと、荷物を背負って両手にも袋をさげた娘がいました。「たくさんの荷物ですのう。大変じゃろ」と声をかけると、「いつもこんくらいな荷物はあたりめ(当たり前)だんね。今日は買い物の帰りせ。かんかん照りで暑くてね」といいます。その娘の目は、赤くはれたまぶたに黄色い目やにがいっぱいつき、開いているのがやっとのようです。

           018 (お堂の近くを流れる水も涸れ、目を洗った泉や身を清めた池の名残は見当たりません)    

「目がお悪いようだが、御仏におすがりしてみてはどうじゃのう。一心にお願いすれば、きっとよくなるじゃろうて」と庵主さまが誘いかけると、「おらも、なんとかして治してえと思っているだが…。この病は治らねえって聞いたもんでね。でも、うちへけえって(帰って)、おっかさまと相談してみるわい」と、娘は答えました。そして、重い荷物を持って坂道を登って行きました。   

次の日、庵主さまがいつものように、お経をあげ終わると「庵主さま、いたかいね」と、戸口から昨日の娘が顔をだしました。「おっかさまに、庵主さまの話をしたら『まあ行ってみろや。ものは試しだ』って言われたもんできただわい。どうか、おたのもします」と、頭を下げました。庵主さまは、さっそく娘を清水の流れる泉へ連れていき、顔や手を洗い、口をすすがせました。   

それから板きれを見つけてきて、ノコギリやカンナで絵馬を作りました。絵馬の真ん中に「目」と大きく書き「おしず、十六歳」と、書き込みました。

           003(暗いお堂の中に、古く小さな神輿と、柱に2枚の絵馬が掛けられています。おしずの書いた絵馬なのでしょうか)

「さあ、おしずさん。これで用意ができました。あとは、あなたの心がお薬師さまに通じれば、きっと治りおるよ。そのため、これから七日七夜、一生懸命にお願いしょうかいの」と庵主さまは、お薬師さまのおられる須弥壇(しゅみだん)の前におしずを連れていき、一緒に座ってお経をあげ始めました。

こうしておしずは、朝夕、お勤めに来てはお祈りし、泉の水で目を洗って帰って行きました。 そして、泉の水で目を洗うたびに目やにが取れ、、赤くはれ上がったまぶたが、少しずつ治っていきました。

やがて、八日目の朝には、目のはれも治りました。泉に映った自分の目を見て、おしずはとても喜びました。

           006(お堂に隣接する物納庫に「大正14年8月新調」と読み取れる消防用具が無造作に置かれていました)

「庵主さまのおかげで。おらやっと自分の目を取り戻したわい。ありがとうございました」と、嬉しさのあまり、おしずは泣きだしました。庵主さまは、おしずの手をしっかりと握り「まあ、よかったの。おしずさんが、本当に熱心にお祈りしおったから、お薬師さまに真心が通じ、治してつかあさったの。これからもこの心を忘れず、御仏の信仰をお続けなされよ。本当によかったの…」と、自分のことのように喜びました。   

しばらくして、このうわさが口づてに広まり、目の病で困っている村の人たちが次々と薬師堂を訪れて、お祈りを重ねていくうちに目の病が良くなっていきました。

こうして、だれいうことなく薬師堂は「目薬師さま」と呼ばれるようになり、遠くからもたくさんの人たちが来るようになったということです。   

   

     * 「あづみ野 明科の民話」(あづみ野児童文学会編)を参考にしました。   

| | コメント (0) | トラックバック (0)

女性にやさしい必需品の布ナプキン

女性にとっては生活必需品ともいえる生理用品ですが、紙ナプキンを使用してムレやかぶれによるかゆみを経験する方も多いようです。

「紙ナプキン」というだけに、紙や木材パルプなど天然のもので製造されているような印象を与えますが、原料の70%が石油から化学合成・処理されてできているといわれています。

化学物質でできた製品を、肌のデリケートな部分に直接当てることによるかぶれやかゆみなどの弊害のほか、人体への影響などが危惧されるようになってきました。

こうした中で、布ナプキンへの関心も広がり使用する方たちも急増しているようです。ハーブスクエアでも「安全・安心の品」として、オーガニックコットンをはじめいろいろな布ナプキンを取り扱っています。

     3

オーガニックコットンをふんわりと起毛させたネル生地のものや、カニの殻から取り出したキチン・キトサンと木材パルプ、コットンなどを素材にしたクラビオンコットン布を使ったものなどがあります。いずれも肌にやさしく、使い心地のよさが実感できるものです。

用途も、経血の軽い日、普通の日、多い日(夜)用があるほか、ズレ防止のハネ付きやモレの不安を解消した防水シート入りのものなどもあります。また、外出先で使用済みの布ナプキンをしまえて携帯できるバッグもあります。柄もいろいろあります。

使用した布ナプキンは、重曹に一晩程度つけ置きしますと血液も分解しますので、何度でも使用できます。

布ナプキンを使用している方たちから、「生理痛が軽くなった」「経血量が少なくなった」などの話しをよく聞きます。気持ちの上でも、安心して使えることへの信頼感が精神的なプラス作用を及ぼしているのかもしれません。

使い捨てナプキンは年間80億枚を超える量が生産され、ゴミとして処理されているという統計もあります。紙おむつなどを含めると膨大な数になるともいわれています。それだけ森林破壊も進んでいることになります。

肌に優しく、エコにも役立つ布ナプキンを一度お試しになってみてはいかがでしょうか。

      〔 布ナプキン 〕   オーガニックコットン  1,260円(税込み ) より各種                                         クラビオンコットン      1,113円(税込み ) より各種 

* 〔布ナプキン〕は、ハーブスクエアで通常販売しているほか、通信販売でも取り扱っています。  詳しくは、TEL 0263(83)7782へお問い合わせください。


 


| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野の屋根瓦-9  鶴と亀

「鶴は千年、亀は万年」の不老長寿の格言にあるように、末永く健康に暮らせるようにとの願いを担って、鶴と亀の飾り瓦が屋根に飾られています。

鶴は、三郷・及木の熊野社の本殿の屋根です。

     Photo_5

亀は、明科・犀の宮の社(やしろ)です。

     9

こちらは、堀金・田多井の民家です。どちらもさざ波が背景にあり、防火の願いも込められています。

     020

数日後、撮影ポイントを変えて、亀の顔を撮りました。前にはなかった蜘蛛の巣が張っていて、はっきりと写ってしまいました。

          019

明科・潮の民家で見かけた一風、変わった風貌の亀です。顔、首筋、甲羅までいかつい作りになっています。おそらく、病魔などを家に近づけないという威圧感を表現しているのではないでしょうか。

     062

こちらは頭を甲羅の中に隠したのではなく、残念ながら頭部分が取れ落ちたようです。

     128                    (三郷・中萱の民家)

レリーフの鶴・亀もあります。

     Photo                    (穂高・耳塚の民家)

     Photo_2                    (穂高・矢原の民家)

     3                    (穂高・柏原の民家)

鶴と亀が、それぞれ別になった装飾瓦を掲載しましたが、一体になったものもあります。後日ご紹介します。

 





| | コメント (2) | トラックバック (0)

安曇野は連日霜が降り、落葉も始まっています

安曇野は、連日冷え込みが強く、霜の降りる朝を迎えています。野の木々の落葉も始まっています。
降霜のあった日は、ガーデンもあちこちにその跡を見せます。タイムの上に…。

     009

コモンセージの葉にも。葉の外側が覆輪のように見えますが、霜の跡です。

     005

ガーデンの樹木も次々と葉を落とし、葉が残っている広葉樹は奥にひと際大きく伸びているピンオークと、その手前右に黄色く色づいているダンコウバイなど数本になりました。

     017

ピンオークは、広葉樹の中でも遅くになって紅葉し、ゆっくり落葉し始めます。

     011

ブナ科に属し、北米に分布します。カシワの仲間ですので葉に深い切れ込みがあり、先端に鋸歯(のこぎりば)があります。

     013

やがてピンオークが裸樹になるころ、季節が冬に変わったことを知ります。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野の屋根瓦-8  狛犬(その2)

各地の寺社に置かれている狛犬は、膨大な数に及びます。ここでご紹介しているのは、屋根の上の瓦製のものですが、寺社の門前には石製、青銅製、陶製、セメント製などさまざまです。    

         Photo               (三郷・二木の地蔵堂)

狛犬の源流をたどると、古代オリエント時代のライオン(獅子)像がルーツになるという説があります。

仏教の伝来とともに、中国から獅子という強い動物がいることが伝わっても誰も見たものがいません。想像を巡らせて作るものの角があったり、なかったり、実際のライオンと似ているようで似ておらず、結局、架空の守護獣ができあがったというものです。

     7                 (穂高・白金の八幡社)

沖縄にシーサーと呼ばれる守護獣が、建物の門、屋根などの上に据えられていますが、獅子を沖縄方言でシーサーと言うそうです。

     077                (明科・中川手の広田社)

もともとは、単体で魔除けとして置かれていたのが、狛犬の影響を受けて一対になったということです。

     6              (穂高・穂高の民家)

狛犬は、初めは天皇の守護獣として宮中のもので、時代を経て寺社にも霊獣として置かれるようになった歴史があるのに比べ、シーサーは明治以降、庶民に瓦葺きが許されるようになってから、各家に普及したのだそうです。

     191               (豊科・真々部の諏訪社)

また、狛犬に雌雄の別があるのかどうかということですが、諸説あるようです。でも想像上の動物(?)ですので、雌雄の別はあってもなくてもいいのではないでしょうか。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

メディカルハーブ-1   エルダーフラワー

このブログをご覧になっている方や、来店していただいた方たちから「個々のメディカルハーブの作用について、もっと知りたい」「体調がよくないときに、その状態に合わせたハーブを教えてほしい」の声があります。

こうしたことから、このカテゴリーで随時、わかりやすくご紹介していきたいと思います。

第一回は、エルダーフラワーから始めます。

       ………………………………………………………………

エルダーフラワー

甘い香りのエルダーフラワーは、風邪やインフルエンザの諸症状を緩和します。鼻水の流れを穏やかにし、喉の痛みをやわらげ、発汗作用を促し解熱します。

イギリスなどヨーロッパ各国では、この濃縮液に甘味づけをして子どもたちに「風邪の特効薬」「風邪の予防薬」として飲ませる習慣があります。濃いめにいれて、うがい用に用いても効果があります。

           3_2

くしゃみ、鼻水、目の充血などをともなう花粉アレルギー症状にも、特段の効果を発揮します。花粉の飛散量が多い日は、増量して炎症を抑えるとよいでしょう。

そのほか、ヘルペスやHIVを含むウイルス感染症の治療を助けることでも知られます。

抽出した液を湿布などの外用で用いると、すぐれた抗炎、保湿効果が期待できます。しもやけ、皮膚炎などのときに試すとよいでしょう。化粧水としても使用できます。

           034        

◆ 和名   セイヨウニワトコ

◆ 学名   Sambucus nigra

◆ 主要成分   フラボノイド配糖体(ルチン、クエルシトリン)、フェノール酸(クロロゲン酸)、粘液質、カリウム、精油など

◆ 作用   発汗・解熱、利尿、抗アレルギー、抗炎症、緩下

◆ 効用   風邪、インフルエンザ、上気道疾患の予防と回復、花粉アレルギー症状の緩和、便秘など

| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野はカラマツが黄葉し、金色に輝いています

周りの広葉樹の多くが葉を落とし始める中で、カラマツが一足遅れて見事な黄葉を始めています。薄曇りの中でも、わずかに陽が射すと黄金色に輝き、見る目を楽しませてくれます。

     001

カラマツは、松類のなかでも唯一黄葉し落葉するカラマツです。

これから少し強い風が吹くと葉を落とし、陽射しがあれば金色に輝きながら地上にキラキラと舞い落ちて来る光景は、ダイヤモンドダストに似て圧巻です。

     008

カラマツが落葉すると、安曇野にまもなく冬が訪れます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

下馬落としの観音さま~堀金・田多井

田多井の観音堂は、むかし寺山の峰にありました。大きなお寺で、境内は東西200㍍、南北に100㍍もあり、本堂は四間四方(約7㍍四方)、本尊さまは千手観音で、住職も住んでいて盛んなお寺だったということです。
その当時の話です。

          Photo_5(隆盛を誇った面影はないものの、村人たちの手で観音さまは静かに安置されています)

村人たちは、このお堂の前を通るときは必ず立ち止まってかぶり物を取り、お参りして通るようにしていました。
ある日のこと、弥七は林の草刈りに行くため、観音堂の前を馬に乗って通りかかりました。村の人が「観音さまの前を通る時は、馬から降りねえと、えれえ目に遭うぞ」と声をかけました。観音さまの前を馬から降りずに通ると、落馬して怪我をするという噂が広がっていたからです。
「馬から降りろだと! ここの観音さまは、そんなにえれえだか」と弥七は、村の人のいうことに聞く耳を持ちません。弥七は馬から降りず、お堂の前を通り過ぎました。

     Photo_5       (観音堂の前に、珍しい梵字の石碑が二基建っています)

通り過ぎて少ししたところで、急に馬が「ヒヒーン」といななき、後ろ足で立ち上がりました。「ウワァー、助けてくれぇー」 弥七は大きな声で叫ぶと同時に、振り落とされてしまいました。

そして馬の手綱が身体に絡まったまま引きずられ、石に頭を打ち付けてしまいました。ようやくのことで近くにいた人たちが馬をなだめましたが、弥七は大けがを負ってしまいました。

          Cimg6526(観音堂の周辺は立派な大きい枝垂れ桜がたくさんあり、花のころは遠くからも撮影に訪れる人たちでにぎわいます)

そんなことがあって、しばらくしたある日、役人が村の視察に馬に乗って来たので、組頭が道案内しました。やはり、観音堂の前まで来たのですが、役人は馬に乗ったままです。組頭があわてて言いました。

「お役人さま、観音さまの前を通る時は、馬からお降りくださいませ。このままでは、馬が暴れてしまいます」

「ハッハッハッ、馬が暴れるとな。それはおもしろい」と、役人は聞き入れません。そのまま、お堂の前を通り過ぎました。通り過ぎて少ししたところで、馬が突然「ヒヒーン」といなないたかと思うと、後ろ足で立ち上がり、そして今度は前足を踏ん張り、後ろ足を跳ね上げます。

二度三度、馬が激しく繰り返した瞬間、役人はたまらず地面に投げ出されてしまいました。そして、腰をしたたか打ってしまいました。

           057(寺社の門前などにあらかじめ馬から降りることを告げる石碑を建てていたところもあります。写真は戸隠神社奥社の門前)

この話が、村の隅々まで広がり、隣の村からそのまた隣の村へと伝わり、いつしかこの観音さまを「下馬落としの観音さま」と呼ぶようになりました。そして観音さまの前を通る時は、前にも増して、心をこめてお参りするようになったといいます。

しかし、隆盛を誇った観音堂はその後、火事に遭って焼け落ち住職も去り衰えてしまいました。村人たちは、このままではいけないと話し合い、今の田多井の地に観音堂を再建し祀っています。

 

  * 『あづみ野 堀金の民話』(あづみ野児童文学会編)を参考にしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

戸隠の新そばを堪能しました…「そばの実」

どうしても新そばが食べたくて、戸隠へ出かけました。いつもは鬼無里(きなさ)か長野を経由して行くのですが、今回は初めて俳人・小林一茶の故郷でもある信濃町から向かいました。

一茶の墓とゆかりの地に立ち寄りながら。

墓の近くに俳諧寺の名がある庵が、静寂な佇まいの中に、ひっそりとあります。多くの文人墨客が訪れています。

     020

一茶を偲び詠んだ句や歌が自筆でしたためられ、庵の天井板としてはめ込まれています。作家の田辺聖子さんは、一首詠んでいました。

     014

一茶は、一族の墓のなかで眠っています。

     023

ここから目指す戸隠までは、22㌔㍍。霊峰・戸隠連山は前日からの荒れた天気で雪化粧しています。

     028

いつもの蕎麦屋さん「そばの実」に着いたのが、ちょうどお昼時。奥社の近く、鏡池へと続く道の入り口にあります。

     031

店の周辺は他に建物などなく、雄大な自然が広がるだけ。店内からそんな風景を存分に楽しめるように、ワイドな窓にしているのがうれしいですね。ブナが葉を落とし、カラマツが黄葉していました。

春は、カタクリ、ミズバショウ、ギョウジャニンニクなどの野草が、この店の周辺に顔を表します。

     051

いつものように、先ず、そばがきから。熱い湯でそば粉を十分練り上げます。ふんわり、やわらかくアツアツに仕上がったそばがきに好みの薬味を乗せ、そばつゆをかけていただきます。
ここのそばがきは、いつ食べても感動します。ひたすら練り上げた、そば職人さんの心がこもっているのが伝わってきます。

     035

次は、霧下そばです。

昼夜の寒暖差が15度以上あるところは、朝晩に霧が発生し良質のそばが育つといわれます。戸隠、黒姫山麓、開田高原が、霧下そばの産地として名が知られ、収穫したそばの実を殻つきのまま乾燥させた玄そばを使って打ちます。

     038

石臼で粗挽きしたそば粉を打ちますので、野趣豊かで喉ごしも格別です。一日15食の限定で、この日は幸運にも食べることができました。

そばつゆでもよいのですが、細かく挽いた岩塩をうすくまぶせていただくと、しっかりした腰の強さと弦そばのほんのりとした甘さが口中に広がるのが楽しめます。

     045

ざるそばです。このそばの盛り付け、戸隠独特のもので「ぼっちもり」といいます。横に3束、縦に2束の形で盛り付けるのが定番。

弦そばを挽いたときに香る風味を逃さぬために、冷蔵保存した実を挽いて深山の澄んだ冷水でしめますので、そばの旨さを十分満喫できます。

     050

新そばのおいしさを堪能した後は、そばチーズケーキで仕上げです。

そば粉をふんだんに使いスポンジを作っていますので、チーズの重さも感じません。甘さも控えめ、デザートとしてはもってこいで、そば茶がよく合います。

〔 蕎麦処 そばの実 〕 長野市戸隠3510-25/AM11:30~PM4:00、/定休日:木曜日第3金曜日/TEL 026(254)2102
*詳しくは、こちら  です。

戸隠神社奥社は、ここのところのパワースポット人気に加え、女優・吉永小百合さんがJR東日本のTVコマーシャルに出演して参道の杉木立を紹介したこともあり、大変なにぎわい。ゆっくり散策できそうもないほどの混みあいが続いていました。



 

 


| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野は、紅葉・黄葉真っ盛りです

秋の深まりとともに、安曇野は里にも紅葉が広がっています。
常念岳はすでに冠雪していますが、麓は赤く、黄色く色づいています。

           225_2

堀金・烏川の大庄屋「山口家」にあるカエデも紅葉の盛りです。三百数十年の歴史を持つ旧家で、日本庭園が有名で県文化財に指定されています。

           100_2

北アルプスを世界に紹介した英国人のウエストンも、常念岳登山の際の宿舎として、山口家を使用したそうです。家人の話では「今年の色づきは、とりわけみごと」と語っています。

           106_2

錦秋の秋という表現がありますが、そんな趣さえ感じられます。

山口家を下ると、堀金中学校があります。校門の両脇に大きく育ったイチョウの大木があります。ここも黄葉の真っ只中です。

                         206_2

穂高の中心部にある碌山美術館のカエデやケヤキも来館者を楽しませています。

     234_2

さらに足を伸ばすと、明科・東川手の一帯に三万本あるといわれるケヤキも黄葉し、陽光を浴びて輝きを増しているのを見ることができます。

           256_2

篠ノ井線の廃線敷きがあり、鉄道レールが取り除かれウォーキングコースとして整備されています。

散り積もったケヤキの落ち葉の上を、カサカサと秋の音を聞いて歩くのも風情がありますね。

           252

| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野の屋根瓦-7  狛犬(その1)

寺社の参道で見かける狛犬(こまいぬ)が、屋根の飾り瓦となり、家に災いが及ばないよう守っています。     

     031                  (明科・中川手の龍門寺)

空想上の守護獣で、獅子と言い、狛犬とも言います。

中国から日本へ伝来した当初は「獅子・狛犬」で、向かって右側が口を開いた角がない獅子で「阿像(あぞう)」と呼び、左側が口を閉じ頭に角がある狛犬で「吽像(うんぞう)」と呼んでいたそうです。   

     2                (穂高・宮城の有明山神社)

あの「阿吽の呼吸」の「あうん」です。
しかし、年月を経る中で、この形が崩れ、像としては獅子に近く、呼び方としては狛犬と呼称する場合が多くなっています。

     5                     (明科・北村の宗林寺)

形が崩れたと言っても、必ず一対で配置されます。お寺などの仁王門に一対の仁王像が置かれるのと同じです。

     4                (三郷・及木の熊野社)

     2                 (堀金・田尻の民家)

 

 


 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

お小僧火~穂高・牧

穂高・牧に栗尾山満願寺(くりおざん まんがんじ)という古刹(こさつ)があります。

今はどうかわかりませんが、少し前まで風の吹く夜など夜の暗闇のなかで、寺の千年杉のあたりが明るくなり、ゆらゆらと大きくなったり小さくなったりする青白い火が見られたということです。村人たちはこの怪しい火を「お小僧火」と呼んでいたそうです。

               3                              (満願寺の境内にそびえ立つ千年杉)

満願寺の近くに住む夫婦に、一人の男の子がいました。子どもは外ではあまり遊ばず、家の中で本を読んだり字を書いたりするのが好きでした。そんな子どもを心配した親は「なんとか立派に育てたい。そのためにもお寺においてもらおう」と満願寺の和尚を訪ねました。

すると和尚は「あの子は、ほかの子とは違うと思っていた。ものになりそうだと思う。寺の修業は厳しいがついて来てみなされ」と引き受けてくれました。そして、あくる日から子どもの「お小僧」としての生活が始まりました。

ひと月ほどすると、和尚はお小僧をよび「お小僧や、そろそろこの寺の暮らしにも慣れただろうから、本堂から少し離れた大きな杉の木の根元にある祠(ほこら)に、お灯明(とうみょう)をあげてくれまいか。わしは、もう年だから夜は辛くてのう。いきなり一人で行けとはいわんでな。二、三日は一緒に行ってお灯明のあげ方を教えてやるで、それから後は一人で行ってくれよ」

           Photo                                  (古い歴史をもつ満願寺の本堂) 

さっそくその日の夜から、祠へのお灯明あげが始まりました。暗い夜道をお小僧が提灯(ちょうちん)を持ち、足元を照らしながら歩いて行きました。やがて山門をくぐり、大きな杉の木の下へ来たとき、お小僧は「キャー」と大きな声をあげて座り込んでしまいました。

「どうしたのじゃ」と和尚が声をかけると、お小僧はぶるぶる震え、やっとのことで「あそこに光るものが二つ」と答えました。

           Photo_2                                (石仏が並ぶ境内の小道)

「はっはっはっ。ここはなあ、山の中だでのう。キツネやタヌキ、フクロウなんかいっぱい出てくるのじゃ。そんなことに驚いていては、寺の修業はできんぞ」とたしなめられました。「おら、気が小さくて…」とお小僧がいうと、和尚は「念仏を唱えて歩けば怖くなくなるぞ」と教えてくれました。

いよいよお小僧が一人でお灯明あげに行く日が来ました。道の半分ほどまで来たのですが、額の汗を拭いても背中がゾクゾクしてきて、足が前へ出ません。

木の上から突然ギャーギャーという鳥の鳴き声がしました。お小僧はもうたまらず、今来た道を一目散に走り帰りました。

           Photo_3                              (昼なお暗い杉の木立に囲まれた境内)

すると、待ちかまえていた和尚にひどくしかられ、あげくの果てに、棒でたたかれました。それから三日目のこと。和尚は「おまえは、なんという意気地なしだ。きのうの夜は行かなかったな」とかんかんになってお小僧をしかりました。「はい、かんべんしておくれや。昼間、薪割りしたもんで、くたびれて眠っちまっただわい。こんだっから、きっと、ろうそくあげに行くで」と謝り、ようやくのことで許してもらいました。

それから、五日目の風の強い夜でした。お小僧は、ろうそくをあげるために、真っ暗な道を歩いて行きました。杉林の切れた辺りまで来ると、急に強い風が吹きつけ、提灯の明かりが消えてしまいました。あわてて引き返してきましたが、なにしろ真っ暗な道なので、木の根にぶつかったり、転んだりしながら手さぐりでやっと寺まで帰って来ました。

すると、戸口に和尚が立っていて、大声でどなりました。「こら。またおまえは、ろうそくをあげて来なかったな」と言ったかと思うと、お小僧の腕を取ってぐいぐい引っ張って行きました。「かんべんしておくれや。許しておくれや。和尚さま。かんべんしておくれや」。いくら泣きながら謝っても、一向に聞き入れてくれません。

祠まで来ると、和尚は、お小僧を杉の木にしばりつけ、棒でところかまわず打ちました。そのうち「ひい、ひい」と泣いていたお小僧の声が聞こえなくなりました。「これで少しは骨身にしみたじゃろう。明日の朝までよく考えておれよ」。和尚は、そう言って寺へ帰り寝てしまいました。

           Photo_4(お小僧は、数十段の石段をのぼり、この仁王門をくぐり本堂までの道を歩き修業していたのでしょうか)

次の日、朝めしをすませた和尚は、「昨日の夜は、めずらしく寒い風が吹き荒れていた。お小僧め、あれだけ痛い目にあって今度こそはろうそくをあげるじゃろ。どれ、縄をほどいてやるか」と、杉の木の祠へ行きました。「おい、少しは心を入れ替えたか」と言っても、お小僧はびくとも動きません。

和尚は、お小僧がしばられたまま寝ていると思い、肩に手をかけて揺すってみました。しかし、お小僧は動きません。手首に触った和尚は、びっくりしました。「こりゃ、えらいことをしてしまった。死んでるわい」。和尚は、いろいろと考えましたが、誰も見ていないことから埋めてしまおうと考え、鍬(くわ)を持ってきて、杉の木の根元にお小僧を埋めてしまいました。

次の日の夜、和尚がろうそくをあげに祠へ行くと、杉の木の梢(こずえ)の辺りが、ボーッと明るくなっていました。しばらく立ちつくしていた和尚は、ガタガタと震えだし「小僧のゆうれいだー」と、いったかと思うと、提灯を投げだし一目散に山を駆け下りました。そして、どことも知れず姿を消してしまったということです。

 

* 『 あづみ野 穂高の民話 』(安曇野児童文学会編)、『安曇野の民話』(平林治康著)、『穂高付近の伝説民話考』(臼井雅史著)を参考にしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

手足のひびわれを防ぐハンド&キューティクルクリーム

寒くなって乾燥したシーズンになると、手足がひび割れしたり、かかとが荒れてストッキングが伝線したりする方たちに、とてもいいクリームをご紹介します。

     038

ハンド&キューティクルクリーム」といい、化学成分無添加のすべて100%天然成分だけで作られたクリームです。

レモンとカレンデュラの薬理効果で、硬くなりがちな肘、膝、かかとの角質に栄養を与えしっとりとさせ、ガサガサを取り除き柔らかな肌を取り戻します。乾燥しがちな手や指先にも栄養を与えスベスベにします。爪の甘皮も保護します。

ナチュラルで、品質・安全性の厳しいチェックに合格した商品ですので、安心して毎日お使いいただけます。手に潤いを与え、荒れや乾燥から肌を守り角質を除去する「ハンド&キューティクルクリーム」で、寒い冬を乗り切ってください。

ハンド&キューティクルクリーム 〕    65mg入り    2,415円(税込み )                                                           

* 〔ハンド&キューティクルクリーム〕は、ハーブスクエアで通常販売しているほか、通信販売でも取り扱っています。  詳しくは、TEL 0263(83)7782へお問い合わせください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

早朝の冷え込みで深い霧に被われます

安曇野は10月末からめっきり気温も下がり、いっそう秋が深まった感があります。すでに初霜も降り、連日のように朝霧が深く立ち込め、日の出から数時間は森の中も幻想的な雰囲気に包まれます。

           001

下の写真は朝霧が晴れてきて近くがようやく見えだしたガーデンの光景ですが、遠方にはまだ霧が立ち込めています。

     Photo

気温の上昇とともに霧が晴れると、紅葉したスズランノキも鮮やかな真紅の彩りを見せます。

先月22日にご紹介した時は、まだ色づき始めたばかりでしたが、紅葉は今が最盛期です。

           016

9月の下旬に種蒔きした菜の花も、順調に生育しています。このまま行くと、来年もおいしい菜の花油が搾れそうです。

           035

昨7日は、立冬。やがて駆け足で、晩秋へと向かいます。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野の屋根瓦-6  浦島太郎

飾り瓦として、おそらく全国的にも珍しいのではないかと思われる「浦島太郎」の瓦像があります。

それも、竜宮城から戻った太郎がお土産の玉手箱を開ける前の喜びに満ちた表情と、開けた後に一瞬にして年老いた姿に変わった一対で、手の込んだ飾り瓦です。   

          006_2                (玉手箱を開ける前の浦島太郎)

この浦島太郎瓦があるのは、穂高・宮城の有明山神社の手水舎の屋根の上です。社(やしろ)の入り口でもあるので、樹齢の永い樹木の陰となり、屋根瓦は苔むしていて年代を感じさせます。      

     024        (玉手箱を開けて、たちまち年老いてしまった浦島太郎)

           027(横から見ると、髪や髭が伸び背も丸く、顔には皺がより一気に年とった浦島のなかなか細かい描写になっています)

この手水舎には、他にも孔子と孟子(これも珍しい!)、狛犬(こまいぬ)、鯱(しゃち)なども屋根の上に鎮座しています。(以後、順次ご紹介します)。

鬼瓦部には、豪華な菊水と紋所、竹林に虎が彫られています。(10月15日の「安曇野の屋根瓦-1」に掲載しました)。

そして、この手水舎は、他にも見どころがたくさんあります。手水が流れる口にある龍のブロンズ像が、するどい爪の部分までリアルに細工されています。

さらに見落としがちなのですが、屋根の反対側、すなわち天井部にみごとな龍の彫刻が飾られています。口の中が赤く彩色され、たけだけしさがいっそう迫ってきます。飛騨の匠の作ということです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

自己免疫力を上げ、風邪を予防するハーブティー

秋も深まり、乾燥した外気温が冷たく感じられる季節となって来ました。こうした状態が続くと気になるのが、風邪やインフルエンザの流行ですね。この時期にお薦めしたいブレンドハーブティー「健康-26  かぜ・よぼう  のご案内です。

このハーブティーは、ふだんから飲用していただきますと、自己免疫力が向上すると同時に、強い抗菌、抗ウイルス作用で、体内に侵入してきた感染菌やウイルスを不活性にします。

     021

疲れがたまっていたり、身体が衰弱気味であったり、あるいは日ごろから強いストレスをかかえるような生活を続けていますと、自己免疫力が低下してしまいます。抵抗力がない分、風邪やインフルエンザが流行り出すと、罹りやすい状態にあるといえます。

自己免疫力の向上が図られますと、白血球内のリンパ球や顆粒球のバランスもよい状態になっていて、仮に風邪に罹ったとしても回復力は格段とレベルアップしています。すなわち治癒が短い時間で済むということになります。

風邪やインフルエンザが流行しだすころはもちろん、ふだんから「健康-26  かぜ・よぼう  を飲んで自己免疫力の向上を図り、健康な生活を目指してはいかがでしょうか。

ブレンドハーブティー 「健康-26  かぜ・よぼう 」  90g入り  1,890円(税込)

* 「健康-26  かぜ・よぼう 」は、通信販売でも取り扱っています。 詳しくはTEL 0263(83)7782へお問い合わせください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

安曇野の屋根瓦-5  鍾馗(その2)

鍾馗(しょうき)が、なぜ邪気悪病を払う神となったかは中国の故事にさかのぼります。鍾馗は、中国・唐の時代の進士を目指した人物です。          

     Photo                    

     3                              (堀金・田多井の民家)

進士とは、日本の国家公務員に当たる官吏(科挙)登用の学科試験の合格者です。 しかし、鍾馗はこの難関に挑みましたが不合格となり、失意のあまり自らの命を絶ってしまいました。

     059                            (明科・下押野の民家)                                                  

その後、唐を治めていた第六代の皇帝・玄宗がマラリヤに罹って臥せていた時のことです。高熱にうなされていた玄宗の夢のなかに小鬼が現れ、玄宗が大事にしていた玉笛を盗んで逃げようとしました。

           044                     (筑北・西条の民家)                                                              

その時、大鬼が逃げ道をふさぎ、この小鬼を捕えて食べてしまい、玉笛は無事玄宗に戻りました。

皇帝が「お前は何者か?」とたずねると、鍾馗と名のり科挙試験に失敗し宮中で自ら命を絶ったものの「先代の皇帝(高祖)に丁重に葬られたことを恩に感じ、天下の災いを取り除く誓いをたてました」と答えました。

     100                  (穂高・白金の民家)                                                

玄宗が夢から覚めると、病はすっかり平癒していました。玄宗は、夢に見た鍾馗の姿を絵師に描かせ、、邪気を払う力があるとして世の中に広めさせたということです。

           079                     (堀金・中堀の寺院)      

玄宗は善政を行ったようですが、晩年、絶世の美女・楊貴妃を寵愛し政務を怠り、安禄山の乱を招いたことでも有名ですね。                           

| | コメント (0) | トラックバック (0)

11月 3日(水曜日)は営業いたします

11月3日(水曜)は定休日ですが、祝日になりますので通常営業いたします。
また、3~7日は「安曇野スタイル」の開催期間に当たりますので、休みなしで営業いたします。通信販売業務も同じく営業いたします。
どうぞ、ご利用くださいませ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

湯のくぼ~三郷・南小倉

室山への登り口、西側の山麓に水をいっぱいたたえた室山池があります。

池の側でじっと耳をすますと 「ボコ、ボコ、ボコ」とかすかな音が聞こえ、池の底から時どき白い泡が出ては、水面で「パチッ、パチッ」と消えてしまいます。

お年寄りにいわせると、これはずーっと昔、温泉が湧きでていたことを示す名残りで、温泉として人が行き来していたころ、この一帯を「湯のくぼ」と呼ばれていたのですが、湯の神さまの怒りに触れてその温泉は途絶えてしまったのだといいます。

          028       (かつて温泉が湧き出て、にぎわったという湯のくぼ。今は池になっています)

湯のくぼの温泉は、「白池の湯」といい、皮膚病に効くといわれ遠くからも大勢の人が訪れていました。檜皮葺き(ひかわぶき)の屋根に石をのせた湯屋の中は、ヒノキ造りの大きな湯舟と洗い場がありました。湯屋の外には流れ湯を利用して馬や牛を洗えるように、広く湯が張られていました。

ある日、若い牛方が牛を洗いに来ました。「おう、ちょうど誰もいねえで。ここで洗ってやれ」と、牛を洗い場に引っ張り込みました。洗い始めて少ししたころ、五兵衛がやって来ました。

     175             (若い牛方は、自分の牛をかわいがっていたのでしょうが…)

「兄やい、そりゃあんまりだぞ、湯の神さまのたたりにあうで、やめとけや」と止めました。しかし、牛方は「そんなこたあるもんかい。へへーん」といって聞き入れず、湯舟の湯を手桶でかけるのをやめません。

牛方がそうして牛を洗ってしばらくすると、突然牛が変な声をだして倒れこみました。「やい、どうしただや、シィッ、ソレッ」と、牛方は驚いて必死になって起ちあがらせようとしますが、牛はビクともしません。五兵衛も手を貸して牛の背中を押してみましたが、牛は動きません。

その時です。ドドーンと大地をゆるがすような大音響と、目もくらむような大きな光が流れました。牛方も五兵衛も、その場で気を失ってしまいました。

どのくらい経ったか、五兵衛は耳元でしきりに自分の名を呼ぶ声で目をさましました。隣の家の吾作の顔が目の前にありました。

     024                          (池にはハスの花が咲き、訪れた人を和ませてくれます) 

五兵衛は起き上って辺りを見回し、びっくりしてしまいました。白池の湯の建物はバラバラに壊れて、向こうに飛ばされ煙をあげて燃えています。湯舟も洗い場もなくなっていて、どこがどこなのか面影もありません。向こうに牛と牛方が横たわっていました。      

「おお、あの若い牛方が、おらの止めるのも聞かなんで、牛を洗い場に引っ張り込んだ結果がこれか。なんてこっただ」と五兵衛がいうと、「牛と牛方が倒れているのは、冷てえ水のなかだんね」と、吾作が答えました。
「なに、それじゃ、湯まで止まっちまっただかや。こりーゃ、やっぱり湯の神さまのたたりだいなあ」

                021_2(湯のくぼの温泉は途絶えてしまいましたが、新たに室山の山頂に温泉宿泊施設「ファインビュー室山」ができました)

こうして、あれだけ栄えていた湯のくぼの湯は、湯の神さまの怒りに触れて消えてしまったという話です。

 

             * 『あづみ野 三郷の民話』(平林治康著)を参考にしました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

臨時休業のおしらせ

本日11月1日(月)は、誠に勝手ながら都合により臨時休業させていただきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »