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ふしぎな観音さま~鍋冠山

堀金・岩原に住む茂助は、西山で土引き(馬で木材を引く仕事)をしたり、薪や荷物を運んだりして暮らしていました。               
馬のあおは、村中のどの馬よりも体がひと回り大きく、仕事もよくしました。「どうだ。おらとこのあおは、一番の馬だ」が、茂助の自慢でした。

          122(茂助自慢のあおは、こうして毎日働いて茂助を助けていたのでしょうか=豊科郷土博物館蔵)

いつものように、薪を里まで運んで行っての帰り道、酒屋で一杯飲んでいるうちに、夜もだいぶ更けてきました。「いけねえ、さあて、帰るとするか」。馬の手綱を引いて、暗い野中の一本道をとぼとぼ歩いていると、「ヒヒーン」とあおが突然いなないて立ち止まりました。               

「あお、どうしただや」。驚いて茂助があおをみると、耳を後ろに向け鼻をふくらませ、尻尾を伸ばしてブルブルとわななきながら、鍋冠山(なべかんむりやま)の方を見つめています。「あの山に、なにかいるだかや」と山に目をやると、中腹あたりがチカッ、チカッと光っているように見えます。

          062           (遠方中央の丸みがかった山が鍋冠山=2194m=です)   

「あれはなんだや。あんなとこが光っているなんて。変だぞ」。立ち止まってみていると、まもな く、その光は消えました。「おかしな光だなあ。なんだか、おらとこ呼んでるみてえな光だぞ。明日はひまだで、あお、あそこまで行ってみるか」               

次の朝、茂助はあおと夜が明けないうちに家を出て、川沿いの道をさかのぼり、東峠を西へ西へと向かって上り、やっとのことで鍋冠山に着きました。しかし、あたり一面に霧がまいてい て、昨夜光っていたところなどさっぱり分かりません。

「これじゃあ、どうしょうもねえわ。腹もへ ったで、飯にすっか」。飯を終えてゴロリと横になった茂助は、山登りの疲れからか、やがて寝入ってしまいました。               

と゜のくらい眠ったころか、茂助は夢を見ました。その夢の中に観音さまが出てきました。「わたしは土の中に埋められている。苦しくて仕方がない。そのため昨夜は光を放してお前を呼んだのじゃ。遠いところをご苦労だったが、わたしを掘り出してくれ。頼んだぞ」と、告げられたのでした。

         039       (茂助が観音さまの放った光を見たのはどの辺りだったのでしょうか)

夢から覚めた茂助は、驚きました。すでに夕暮れになっていたからです。そして、あおがすぐ近くで横たわっています。近寄って、あおを起こそうとしましたが息絶えています。               

「あお、どうしただや。おまえに死なれたら、おら、どうやって暮らしたらいいだや」と、茂助はあおの亡がらにすがって泣きました。すると、あおの横たわっている下がピカッ、ピカッと昨夜 のように光りました。               

気を取り戻した茂助は、そこを必死で掘りました。しばらく掘り進むと石の観音さまが出てきました。観音さまを大事に掘り出し、その穴を大きく掘り広げて、あおを埋めました。そして、すぐ近くの松の木の下にあおの墓標として観音さまを祀りました。               

日も暮れてしまったので、茂助はあおの弔いをかねて埋めたそばで寝ることにしました。眠った茂助は、また夢を見ました。あおが元気に土引きしていました。

あおの姿が消えると観音さ  まが、再び現れました。「今日は土の中から掘り出してくれてありがとう。こころばかりのお礼をしたい。わたしの下を掘りなさい」と、告げられました。

          Photo_4(むかし、家族同然だった愛馬がなくなると、村人たちは慰霊の碑を建て供養しました)

朝日の輝く中で、茂助は目を覚ましました。そして、松の下の観音さまを横に寄せて、根元を掘りました。すると、壷が見えてきました。掘り出して中を見ると、小判がぎっしり入っていました。               

「こりゃあ大金だ。……でも、これは観音さまの金だ。そうだ。このお金を借りて、馬を買い、ま た、仕事しよう。そうすりゃ、お金もお返しできる。……観音さま、しばらくお金をお借りするんね」 。茂助は、大事に小判をふところに入れ、山を飛ぶように下りました。               

そして、その後馬を買い、田畑を買い、百姓仕事に精を出しました。暮らしも楽になり、お嫁さんを迎えることができました。観音さまから借りたお金も、そっと山の壷に返すことができました。

 

     * 『あづみ野 堀金の民話』(あづみ野児童文学会編)を参考にしました。              

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