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安曇野を造ったデーラーボッチャ

むかし、むかし、ずーっとむかしのこと、デーラボッチャという、顔は雲に隠れて見えないくらいの大男がいました。あちこちと歩いては、でこぼこした所を平らに直したり、山を削って谷を埋め広い原っぱを造ったり、山の姿に手を入れ見栄え良くするような仕事が好きでした。

                           016_2(室山山頂にあるデーラーボッチャの像。頭上が展望台になっていて、周囲が一望できます)

今日やって来たのは、大きな湖のあるところです。あちこちに浮かんでいる雲を手で払いのけながら考えました。「これはでっかい水たまりだ。でも、水が溜まっているだけじゃおもしろくねえなあ。……… そうだ。この水に映る美しい眺めの山を造ってやろう」と、思い立ちました。

何日も、何日もかけて、造っては崩し、崩しては造りましたが、なかなかうまくできません。でも楽しみながら、時には考え込みながら仕事を続けました。そして、鋭くとがった山が並んだ前には、丸い山や平らな山が並び、谷や川も造り湖へ流れ込むようにしました。こうして、やっと西側ができ上がりました。

こんどは東側に取りかかりました。「こっちは、あんまり高くしないで少し平らな方が、つりあいが取れそうだ」といいながら、形を造って行きました。そして、南と北側も造り上げ、じっと上から全体を眺めて見ました。「うーん、どうもここだけが高いのはおもしろくねえなあ」と、また高い山の続きを造り始めました。こうして、高い山がいくつも連なるように仕上げました。

     Photo(デーラーボッチャが造った?といわれる北アルプスの峰々と安曇野。安曇野はこのころ、まだ湖の底でした)

最後の仕上げが終わった時、股(また)のあたりがむずがゆく感じました。手で触ってみると、もっこふんどしに土が入っています。一生懸命、山造りをしていたので土が入ったのに気がつかなかったのです。 

苦笑いしながら、もっこふんどしの紐(ひも)をほどくと、そこに入っていた土がバラバラと地面に落ちました。その土が盛り上がって、小さな山になりました。(この山が後の室山です)。

背中にも土が入っていたので、手でバタバタとたたくと、やはり土が落ちて丸く盛り上がりました。(今の「背負の山」の出来上がりです)。

          Photo_3   (デーラーボッチャのもっこふんどしに入った土が落ちてできたとされる室山)

この時、デーラーボッチャの腰にさしていた火打石が落ちて、ドボーンと川のなかに隠れてしまいました。「やっ、しまった。火打石を落としてしまったぞ」と気がつき、川のなかに手を入れて探しましたが見つかりません。

なんどもなんども手を入れたのですが、見つけだすことができません。「惜しいことをしたが、またいい石を見つけるか」と、あきらめ、履物に付いていた土を払い落しました。(落とした火打石は松本市梓川倭=あずさがわやまと=の川の中に火打岩として残り、履物から払いのけた土は松本市中山になったそうです)

                  006_4(後の世に、安曇野の湖の水を流して肥沃な平地にしたという伝説の主人公・泉小太郎がデーラーボッチャの掌に座っています)

デーラーボッチャは、自分が苦労して造った安曇野の風景にすっかり満足し、ノッシノッシと別の地に山造りに歩いて行ったそうです。

それから、ずっと後になって、犀龍(さいりゅう)にのった泉小太郎が湖のあった山清路のあたりを突き破り、水をすっかり流したので、湖はなくなり変わって大きな肥沃な大地に生まれ変わり、土地の人は安曇平と呼ぶようになりました。

 

                                    * 『 あづみ野 三郷の民話 』(平林治康著)を参考にしました。

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